最近の町の家具屋と業界について~2代目と3代目の会話①~「この20年色々ありました。」

1995年に創業の家具木の國屋の2代目と3代目がコーポレートロゴ・スローガンの変更に合わせて対談した様子です。
プレスリリースはコチラ

 

2代目 代表取締役 舩坂 康浩
1961年生まれ。長野県で家具屋修行ののち、家業である舩坂タンス店へ。1991年にバイパス沿いに今の家具木の國屋を建て、運営責任者に。現代表取締役。家具屋の良い時代も、悪い時代も見てきた町の家具屋の店長。

3代目 舩坂 康祐
1987年生まれ。高校卒業後、慶應義塾大学商学部を卒業。新卒で楽天株式会社に就職。楽天市場というネット通販の事業に配属後、ネット通販のコンサルタントとして全国の大手・中小企業を500社以上担当。管理職を経て、家具・インテリアなど暮らしの領域の戦略・企画を担当。 2017年退職し、飛騨高山にUターンし、家業である(有)家具木の國屋に

 

 

名前が似ていて分かりにくいので以下、2代目、3代目とします。

 

———  今のお店ができたのが1991年ですが、どんな変化がありましたか?

2代目)この20年色々ありました。たくさんありすぎて、困りますね笑

家具は暮らしに寄り添った商品ですので、世の中の変化に合わせてお客様のニーズも変わってきました。やはり大きな変化は、婚礼家具が売れなくなったということでしょうね。

お店を今の場所にオープンした1990年代はまだ、飛騨地域にも婚礼家具が文化としてありましたが、年々薄れていきました。

———  婚礼家具とは?

2代目)結婚した時に、一般的には新婦側が嫁入り道具として買う家具のことです。洋服箪笥(タンス)、和(衣装)箪笥、整理箪笥の3点セットが主なもので、いわゆる箱もの家具、服を入れるための家具ですね。

当時は景気が良かったというのもありますし、見栄で買い物をするという時代でしたね。

車や、家、祝い事にお金をかける時代でしたの、その中で家具も婚礼家具や応接用の品質が高く、高級なものがよく売れました。

当時の店内の様子

2代目)値段も高かったですが、それだけ良い材料を使い、良い技術で作られたものが多かったです。

3代目)僕も小さい頃は「あー結婚したらこういうの使うのかなぁ」なんて思ってましたが、もちろん自分が結婚するときも買いませんでした(笑)

最近は結婚式自体をしない人、家族だけでする人もいますし、結婚したらかすぐに家具を買うわけではありません。祝い事や買い物への考え方も変わってきたんだと思います。

 

——— 飛騨の家具屋も変わりましたか?

2代目)飛騨に限らず、日本中の婚礼家具を扱っていた家具屋がお店を畳んだり、違う業態のビジネスに移っていきました。飛騨地域にも20を超える家具屋がありましたが、今ではかなり減っています。

私たちも小さい会社が生き残るために、様々な取り組み、変化をしながらなんとか今に至っています。このバイパス沿いにお店を出すということも当時の私たちにとっては大きな経営判断でした。

高級志向がまだ強かった時代には「ペルシャ絨毯展」もやりましたし、まだまだ洋式の暮らしが馴染み始めた頃はどこよりも早く、アメリカまで直接買い付けにも行きました。品揃えも大きく変わっています。

ペルシャ絨毯展の様子
アメリカ輸入家具店の様子

 2代目)その一方で、元気のない家具の産地が増えた中で、飛騨の家具はブランドとしてより確立されてきた気がしますね。

飛騨の家具という商標や憲章を作ったということもありますし、地道なもの作りが、ここにきて再評価されてきているのだと思います。

 

——— 他にはどんな変化がありましたか?

 2代目)生活様式の変化でしょうね。

先ほどの婚礼家具が売れないということにも関連しますが、和服を着なくなり、服が安くなり、わざわざ吊るしたり、保管するような服が減ってきました。そうすると服を入れるための家具にもお金をかけない、必要すらないという人も多くなってきました。

3代目)うちも衣装ケースやハンガーラックも合わせて使っています。

2代目)あとは和室から洋室。洋式の生活の定着でしょうね。当店でも今は、ベッド、ソファ、ダイニングが売り上げの多くを占めています。

文化として定着したということもありますし、楽なんですよね。床に寝たり、座るよりもベッドやソファの生活の方が。

3代目)最近は、そこに高齢化も影響してきましたね。

畳ベッドや介護ベッドが売れるのは想像できるのですが、最近ではコタツも椅子タイプのものが主流になってきました。足腰が痛くなってくると床座がきつくなりますので、椅子タイプのものを選ばれる方が増えてきました。

2代目)人生100年なんて言われると私もまだ折り返しを少し過ぎたところで、ゾッとするのですが笑

人生が長いと60歳以降に買うものや、買い物の仕方も変わって来ると思うんです。

 

———端的に、ニトリさんが近所にできましたがどうですか?
(1キロ隣のアピタ内にニトリが出展していますが。)

2代目)直球で来ますね(笑)

そりゃあ、大変ですよ。

でも、逆にニトリのような会社が参入する価値があるマーケットなんだなと思うようにしています。やり方次第では、まだまだ可能性があるんだと。

———ポジティブですね。

2代目)実際、取扱商品やターゲットなどそんなにかぶってはないんです。

3代目):僕も高山に引っ越してすぐに、ニトリさんで室内用の物干し買いました(笑)

2代目):ニトリができたことで飛騨の方も暮らしにより興味をもち、敏感になったというのは間違いないでしょうね。あとはニトリという絶対的な基準ができたのは大きいですね。

3代目):これはニトリより高いとか、安いとか。そこに対して理由を説明できるとお客様の納得感が変わってきます。昔から家具は値段がよくわからないという印象があるみたいなのですが、あ、うちは明朗会計ですよ。

ニトリを基準にお客様が考えることで、「これは安い」とか「だから値段が高いんだね」と納得してくれるようになりました。

予算は人それぞれですが、納得してものを買えるようになってきたというのは大きいですね。

 

―――ネットの影響はどうですか?

3代目):これは僕の得意分野ですね。2-3時間くらい話せますよ笑

やっぱりこんな田舎でも、ありますね。携帯を見ながら商品を探す方は増えましたね。

2代目):ネットというものがよく分からなかったのですが、息子夫婦を見てて、ネットの力がよく分かりました。脅威というよりも、もっとうまく利用する必要があるんだなと。

最近の人は考えたり、調べたり、買い物したり、その入り口がネットになってきてるんでしょうね。
私なんかはめんどくさいから、知り合いに聞いて買うみたいなことが、めんどくさくないんですから。

しかもそれをスマホでやってる。

3代目):まだEC(ネット通販)はやってませんが、コーポレートサイトをまずリニューアルして、運用してるのですが、この2-3カ月でサイトを見てくれる人は10倍以上になりました。

家具木の國屋のサイト

今はこの高山の実店舗しかないので、来店につながるように飛騨地域や近隣の県の方を主にターゲットにコンテンツを作り、運用していますが、来年は今の商圏外へアプローチをしていきます。

2代目):ネット通販で売っている会社はたくさんありますが、結局作ってるところや仕入れているところは似たり寄ったりなんです。

そういう意味ではこれまで培ってきたものは大いに活かせると思います。これまでは活かし方が分からなかったですので。

あとはネット通販はどうしても送料という問題があるので、家具屋はそこをどうするかですね。

3代目):逆に実店舗があって、地域密着のお店にも活路はあると思うんです。

大きな家具を通販で買うと、送料は5,000円、2人で配達が必要な大きなソファなんかは15,000円くらいはします。大量仕入れができるとこは仕入値は安くなりますが、お客様への配送・配達する送料はどうしても物理的に掛かってきます。玄関で渡されてもどうにもできないような商品、普通の配送では送れない大きくて、特殊な家具はたくさんありますからね。

家具専用の業者便を使えば当店までは安く来ます。そしてそこから地元のお客様へは自社便で配達するので安くすみます。商品によってはお客様に持って帰ってもらうことも。もちろんその分は商品の値段に還元しています。そして、配達の際には組立や段ボールの引き取りといったサービスもできる。

在庫がある商品で、地元のお客様なら、アマゾンよりも早い(笑)タイミングにもよりますが、大型家具がその日や翌日の配達も調整できますから。

2代目):あとはやっぱり、「実物を見て買いたい」という欲求はそんなに簡単には解決できないと思います。

3代目):今、家電がだいたいEC化率(ネット通販で買い物をする比率)が30%、家具は10%弱と言われてます。ちちろんこの数字はまだまだ伸びるので、ネット通販をやらない理由はないのですが、実店舗をうまく活用しながらやっていきたいですね。

せっかく、飛騨高山で家具屋をやってますので、そこに足を運んでいただけるような買い物体験が提供できるようなお店にしたいです。

2代目):別に今も昔も色んな変化がありましたら、いかにそれに柔軟に対応、そして少しだけ先を行けるかだと思います。

あとは息子に任せるだけです(笑)

 

対談記事②10月31日12時リリース:新しいロゴとコンセプトへの想い~2代目と3代目の会話②~「あえて家紋を、こんな時代だから使ってみたい」

対談記事③11月2日12時リリース:事業承継とこれからについて~2代目と3代目の会話③~「息子はもう帰ってこないと思っていました。」